1. 基本用語
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帰属
出来事や他人の行動や自分の行動の原因を説明する心的過程(…のせいにする)。
簡単にいえば、人柄のせいにするのが内的帰属であり、事情のせいにするのが外的帰属である。 -
動機づけ
行動を始発させ、目標に向かって維持・調整する過程・機能。
好奇心や関心によってもたらされ、賞罰に依存しない行動が内発的動機づけであり、
義務、賞罰、強制などによってもたらされる行動が外発的動機づけである。
以下の認知バイアスの日本語訳は、できるだけ既に翻訳されている用語を用いている。
しかし、翻訳が見つからなかった場合には勝手に日本語を造語している。
2. 信念形成の際の認知バイアス一覧
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後知恵バイアス
(Hindsight bias)物事が起きてからそれが予測可能だったと考える傾向。
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可用性カスケード
(Availability cascade)主張を何度も聞いているうちに、真理であると確信する傾向。
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可用性ヒューリスティック
(Availability heuristic)認識、理解、決定の際に、思い出しやすい情報だけに基づいて判断する傾向。
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観察者期待効果
(Observer-expectancy effect)観察者が期待する効果を観察する観点で解析し、無意識のうちにデータを誤って解釈する傾向。
観察者効果の一種。 -
感情移入ギャップ
(Empathy gap)怒ったり恋愛したりしている時に、その感情を持たない視点で考える事ができない傾向。
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感情バイアス
(Emotional bias)たとえ相反する証拠があっても、心地よい感覚をもたらす肯定的な感情効果のあることを信じたがる。
逆に好ましくない、精神的苦痛を与えるような厳しい事実を受け入れたがらない。 -
確証バイアス
(Confirmation bias)仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向。
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コントラスト効果
(Contrast effect)比較対象によって評価が変わる傾向。
マーケティングでよく使われる。 -
コントロール幻想
(Illusion of control)実際には自分とは関係のない現象を、自分がコントロールしていると錯覚する。
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錯誤相関
(Illusory correlation)相関がないデータに相関があると思い込んでしまう現象。
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サンプルサイズに対する鈍感さ
(Insensitivity to sample size)少数のサンプルを調べただけで信念が形成される傾向。
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主観的承認
(Subjective validation)ある情報を聞いた時、自分の信念がそれが正しい情報、或いは関連がある情報であると要求する場合、その情報を正しい或いは関係があると考える傾向。
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真理の錯誤効果
(Illusory truth effect)間違った情報や大げさな情報でも、何度も報道されているうちに本当だと考える効果。
初めて知った主張よりも、既に知っている主張を正しいと考える。
「ウソも百回つけば本当になる」とも言う。 -
実験者バイアス
(Experimenter’s bias)自分の予測と一致するデータを重視し、反するデータを無視する傾向。
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信念の保守傾向
(Conservatism)新しい証拠を提示されても、信念が十分に変更されない傾向。
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信念バイアス
(Belief bias)論理的に正しいが信念に反する主張よりも、論理的に間違っているが信念に合致する主張を信じる傾向。
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心理的リアクタンス
(Reactance)他人から選択を強制されたりすると、例えそれが良い提案であって反発する傾向。
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正常性バイアス
(Normalcy bias)自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性。
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生存バイアス、生存者バイアス
(Survivorship bias)現在残っている物だけを調査し、淘汰された物を調査しないために誤った信念を持つ傾向。
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選択的知覚
(Selective perception)不愉快な情報や、それまでの信念に反する情報はすぐに忘れる傾向。
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センメルヴェイス反射
(Semmelweis reflex)通説にそぐわない新事実を拒絶する傾向、常識から説明できない事実を受け入れがたい傾向。
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専門偏向
(Professional deformation)自分の得意な分野の視点でのみ観察し、他の視点では見ない傾向。「専門バカ偏向」とも言う。
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妥当性の錯覚
(Illusion of validity)後から得られた関連する情報が、主張を補強する情報であると考える錯覚。
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怠慢バイアス
(Omission bias)悪事を実際に行動する方が、重大な怠慢よりも罪深いと考える傾向。
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ダチョウ効果
(Ostrich effect)危機の存在が明白であるにも関わらず、そのような問題は存在しないように考える傾向。
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直接立証バイアス
(Congruence bias)仮説を直接立証する事に注意を集中し、間接的に立証しようとしない傾向。
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バーナム効果
(Forer effect)誰にでも該当するような曖昧で一般的な性格をあらわす記述を、自分だけに当てはまる正確なものだと捉えてしまう心理学の現象。
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バイアスの盲点
(Bias blind spot)自分は偏見が少ないと考えるバイアス。
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フォーカス効果
(Focusing effect)最初に接した情報に引きずられ、物事の全体像ではなく一部分の側面しか見ようとしない傾向。
3. 認識、選択、行動決定の際の認知バイアス一覧
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曖昧性効果
(Ambiguity effect)情報が不足している選択肢は避ける傾向。
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熱い手の誤謬
(Hot-hand fallacy)賭博など、ランダムなイベントでうまく行くと、次もうまく行くと考えて止められない。
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アンカリング
(Anchoring)先行する何らかの数値(アンカー)によって後の数値の判断が歪められ、判断された数値がアンカーに近づく傾向のことをさす。
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イケア効果
(IKEA effect)少しでも手間をかけると、出来上がった物への評価が高まる効果。
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イノベーション推進バイアス
(Pro-innovation bias)実際は欠陥がある発明にもかかわらず、社会全体が新技術の有効性を過剰に楽観的に考える傾向。
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インパクトバイアス
(Impact bias)将来経験するであろう事件の衝撃や時間を過大に推測する傾向。
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韻踏み効果
(Rhyme as reason effect)韻を踏んだり似たような表現を繰り返すと説得力が増す効果。
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ヴェーバー‐フェヒナーの法則
(Weber-Fechner law)量が多くなると、変化に気付きにくくなる傾向。
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おとり効果
(Decoy effect)実際には選ばれる事のない選択肢を混入させる事によって、意志決定が変わる効果。
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確率の無視
(Neglect of probability)不確かな状況の元では、確率の低い出来事は過度に意識されるか、完全に無視されるかのどちらかである傾向。
確率の低い出来事が重なって起きる可能性も無視される傾向。 -
貨幣錯覚
(Money illusion)実質値ではなく名目値に基いて物事を判断してしまう傾向。
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擬似確信効果
(Pseudocertainty effect)結果が予想通りだとリスクを避けようとするが、結果が思わしくないとリスクを犯そうとする傾向。
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気質効果
(Disposition effect)株などの資産が値上がりした時には売りたがるが、値下がりした時には売りたがらない傾向。
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機能的固定
(Functional fixedness)「本来こうやるべき」という固定化した考えが問題解決を妨げる傾向。
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擬人化
(Anthropomorphism)動物、物体、抽象的概念などの特徴を人間の感情や行動等に例える傾向。
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基本比率の錯誤
(Base rate fallacy)イメージしやすい特殊な数字には敏感に反応する一方で、統計的な一般的な数字は無視する傾向。
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逆進性バイアス
(Regressive bias)高い可能性や値を更に高く評価し、低い可能性や値を更に低く評価する傾向。
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ギャンブラーの誤謬
(Gambler’s fallacy)個人的な主観によって確率論に基づいた予測を行わない傾向。
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区別バイアス
(Distinction bias)二つ選択肢を別の機会に評価すると似ていると感じるが、同時に評価すると似ていないと感じる傾向。
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クラスター錯覚
(Clustering illusion)ランダムな現象に一定の法則があるように錯覚する傾向。
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計画の誤謬
(Planning fallacy)計画の達成にかかる時間を実際よりも短めに見積もる傾向。
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結果バイアス
(Outcome bias)結果に至るプロセスよりも結果のみを重視する傾向。
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購入後の合理化
(Post-purchase rationalization)買った物は良い物だと考える傾向。
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現状維持バイアス
(Status quo bias)何か問題が出ない限り、現状維持を望む傾向。
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コンコルド効果
(Sunk cost fallacy)これまで費やした費用、時間、人命などが無駄になる事への恐怖から、それまでに行ってきた行為を正当化するために非合理的な判断をするようになる効果。
関与のエスカレーションも参照。 -
時間節約バイアス
(Time saving bias)高速走行の時に更にスピードを出そうとするのに対し、低速走行の時にはスピードを上げようとはしない。
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自制バイアス
(Restraint bias)自分の自制心を過大評価する傾向。
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自信過剰効果
(Overconfidence effect)判断の主観的な自信が、客観的な実際の評価よりも高くなる傾向。
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持続の軽視
(Duration neglect)不快な事件について、どれだけ不快な期間が持続したかをあまり問題にしない傾向。
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自動化バイアス
(Automation bias)作業の自動化に過度に傾斜し、自動化システムの生み出す問題に悩まされる傾向。
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情報バイアス
(Information bias)多くの情報を集めた方が正しい決定ができると考え、関係の無い情報を集めてしまう傾向。
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新近性錯覚
(Recency illusion)単語や用法が、最近使われるようになったと考える傾向。
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ゼロサムヒューリスティック
(Zero-sum heuristic)誰かが利益を得れば、誰かが損をすると考える傾向。
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ゼロリスクバイアス
(Zero-risk bias)ある問題の危険性を完全にゼロにする事に注意を集中し、他の重要な問題の危険性に注意を払わない。
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双曲割引
(Hyperbolic discounting)遠い将来なら待てるが、近い将来ならば待てない傾向。
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損失回避
(Loss aversion)利益を得る事よりも、損失を回避する事に集中する傾向。
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注目バイアス
(Attentional bias)繰り返し思考する概念については、より注意して観察する傾向。
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小銭効果
(Denomination effect)大きな金を与えても使いたがらないが、小さな金を多く与えるとより多く消費する傾向。
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難易度効果
(Hard easy effect)難しい問題は難易度を低く見積り、簡単な問題は難易度を高く見積もる傾向。
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ネガティビティ・バイアス
(Negativity bias)ポジティブな情報よりもネガティブな情報の方が、行動に強い影響を与えるバイアス。
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剥奪忌避
(Endowment effect)既に手に入れた物を手放す事を、非理性的に嫌がる傾向。
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パレイドリア
(Pareidolia)無作為あるいは無意味な情報の中から、普段からよく知ったパターンを思い浮かべる現象。
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悲観主義バイアス
(Pessimism bias)落ち込んでいる時には、さらに悪い事が起きると感じる傾向。
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頻度錯誤
(Frequency illusion)一旦気にし始めると、急にそれを頻繁に目にするようになる錯覚。
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フレーミング効果
Framing effect同じ情報を異なる言語表現で伝達すると、異なる意志決定をする効果。
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ユニットバイアス
(Unit bias)課題を終了する事に注意を集中する傾向。
何であれ、やり終える事に人間は満足を感じる。 -
楽観主義バイアス
(Optimism bias)悪い事は自分には起きないと考える傾向。
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リスク補償
(Risk compensation)リスクが高い時は安全な行動をするが、安全になるとリスクの高い行動を取る傾向。
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劣加法性効果
(Subadditivity effect)全体が起きる可能性は部分の可能性よりも低いと考える傾向。
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Less-is-better効果
(Less-is-better effect)同時に評価した場合には「多い方」を選択するにも関わらず、別々に評価すると「少ない方」を選択する傾向。
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連言錯誤
(Conjunction fallacy)特殊なケースの方が一般的なケースより起こりやすいと考える錯覚。
4. 社会関連の認知バイアス一覧
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陰性効果
(Negativity effect)嫌いな人物の良い行動はその人の外的な要因に帰属させ、悪い行動は内的な要因に帰属させる傾向。
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NIH症候群
(Not invented here)ある組織や国が、アイデアや製品の発祥が別の組織や国であることを理由に採用しない、あるいは採用したがらない傾向。
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外集団同質性バイアス
(Outgroup homogeneity bias)自分の所属する集団の多様性が他集団よりも高いとみなすバイアス。
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外部動機づけバイアス
(Extrinsic incentives bias)他者には外発的動機づけがあり、自分には内発的動機づけがあると考えるバイアス。
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外部代行者の錯覚
(Illusion of external agency)自分の嗜好や性格が自分自身の性質ではなく、外部代行者(尊敬する者など)の影響によって生み出されたと考える傾向。
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究極的な帰属の誤り
(Ultimate attribution error)好きな内集団のメンバーの行動は、その人の好ましい性格により行われたと考え、嫌いな外集団の行動は、好ましくない性格により行われたと考えるバイアス。
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共有情報バイアス
(Shared information bias)集団において既に共有されている情報に関しての議論に多くの時間を費やし、共有されていない情報に関しては時間を費やさない傾向。
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研究テーマの期待効果
(Subject-expectancy effect)結果が期待されている場合、研究者が無意識の内にデータを誤って解釈してしまう傾向。
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行為者-観察者バイアス
(Actor–observer bias)人間は人の行動を根拠なくその人の「種類」によって決定されていると見る傾向があり、社会的かつ状況的な影響を軽視する傾向がある。また、自身の行動については逆の見方をする傾向がある。
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公正世界仮説
(Just-world hypothesis)この世界は人間の行いに対して公正な結果が返ってくると考える傾向。
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誇張された予想
(Exaggerated expectation)現実世界は予想していたよりも、普通である傾向。
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根本的な帰属の誤り
(Fundamental attribution error)個人の行動を説明するにあたって、気質的または個性的な面を重視しすぎて、状況的な面を軽視しすぎる傾向を言う。
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システム正当化バイアス
(System justification)現状のやり方に例え問題があったとしても、未知のわけのわからないやり方を選択をするよりも、知っている現状のやり方を選択しようとするバイアス。
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社会的望ましさバイアス
(Social desirability bias)社会的に望ましい側面のみを報告し、望ましくない側面を報告しない傾向。
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社会的比較バイアス
(Social comparison bias)自分よりも精神的、或いは肉体的に優れているように見える者に対して敵意を持つ傾向。
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集団の帰属の誤り
(Group attribution error)構成員の特徴は集団全体の特徴を反映し、集団の意思決定は個々の構成員の選択を反映すると錯覚するバイアス。
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自己奉仕バイアス
(Self-serving bias)成功を当人の内面的または個人的要因に帰属させ、失敗を制御不能な状況的要因に帰属させること。
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ステレオタイプ
(Stereotyping)集団の構成員には特定の特徴があると考える傾向。
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第三者効果
(Third-person effect)自分はマスメディアの情報にあまり影響されないが、他人は影響されやすいと考える傾向。
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ダニング=クルーガー効果
(Dunning–Kruger effect)知識のない人ほど自分は能力があると思い込むという仮説。逆に、知識や能力の高い人は、周囲も自分と同じ程度の能力を持っていると思っているので、自分はまだまだだと感じるという。
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闘いの軌跡効果
(Well travelled road effect)普段から行っている作業の苦労を過少評価し、初めて挑戦した作業の苦労を過大評価する傾向。
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単純接触効果
(Mere exposure effect)繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。
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チアリーダー効果
(Cheerleader effect)集団内の人間が実際よりも魅力的に見える傾向。
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知識の呪い
(Curse of knowledge)専門知識を持つ集団は、その知識を持たない人達の考えを想像する事ができない傾向。
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凋落主義
(Declinism)社会や組織が凋落しつつあると考える。過去を美化し、将来を悲観する傾向。
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敵対的メディア認知
(Hostile media effect)メディアが自分とは反対側の陣営にとって有利な方向に歪んでいると認知する傾向。
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投影バイアス
(Projection bias)他の人が自分と同じように考え、自分の意見に同意するはずだと考えるバイアス。
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同調バイアス
(Conformity bias)行動を選択する際に、他者の一般的な行動を観察し、それに同調するバイアス。
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透明性の錯覚
(Illusion of transparency)他者が自分を把握する能力を過大評価する傾向。また、自分が他者を把握する能力を過大評価する傾向。
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道徳的運
(Moral luck)運の良し悪しを、道徳の良し悪しに結びつけて考えるバイアス。
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特性帰属バイアス
(Trait ascription bias)自分は状況に応じて臨機応変に対応できるが、他人は状況が変わっても同じ対応しかできないだろうと考えるバイアス。
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内集団バイアス
(Ingroup bias)自分が属している集団には好意的な態度をとり、外の集団には差別的な態度をとるバイアス。
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ナイーブ・シニシズム
(Naive cynicism)自分より相手の方が自己中心的だと考えるバイアス。
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ナイーブ・リアリズム
(Naive realism)自分だけは他者と違って、外界の現象を認知バイアスに囚われる事なく客観的に見ていると考えるバイアス。
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偽の合意効果
(False consensus effect)自分の態度や行動を典型的なものと考え、同じ状況にあれば他者も自分と同じ選択や行動をするだろうと考えるバイアス。
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パーキンソンの凡俗法則
(Law of triviality)組織が些細な物事に対して、不釣り合いなほど重点を置く傾向。
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バックファイア効果
(Backfire effect)他者が不当性を証明しようとすると、逆にますます信念を深める傾向。
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ハロー効果
(Halo effect)ある対象を評価をする時に顕著な特徴に引きずられて他の特徴についての評価が歪められる現象のこと。
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反射的逆評価
(Reactive devaluation)相手の意見を反射的に低く評価する傾向。
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バンドワゴン効果
(Bandwagon effect)ある選択が多数に受け入れられている、流行しているという情報が流れることで、その選択への支持が一層強くなる効果。
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非対称な洞察力の錯覚
(Illusion of asymmetric insight)自分は他者をよく知っているが、他者は自分の事をよく知らないと考える錯覚。
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平均以下効果
(Worse-than-average effect)困難なタスクに直面した時、自分の能力を過小評価する効果。
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防衛的帰属仮説
(Defensive attribution hypothesis)事故などのニュースを聞いた時、被害が大きいほど、或いは被害者が自分の立場と似ているほど、より加害者の責任が重いと考える傾向。
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本質主義
(Essentialism)一定の集団やカテゴリーには超時間的で固定的な本質が有り、それによってその内実が規定されていると想定する傾向。
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身元のわかる犠牲者効果
(Identifiable victim effect)一人の子供が井戸に落ちたら世界は救出のために大騒ぎするが、大気汚染で数万人が死んでも大して騒ぎにならない。
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モラル信任効果
(Moral credential effect)自分のモラルが他者に信任された場合、多少非倫理的な行動を犯しても他者は許すであろうと考える傾向。
地位の高い有名人が信じられない非倫理的行動を行う理由はこのバイアスが働いている可能性がある。 -
優越の錯覚
(Illusory superiority)自分の資質を過大評価し、他者の資質を過少評価する傾向。
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陽性効果
(Positivity effect)好意を持つ人物の良い行動はその人の内的な要因に帰属させ、悪い行動は外的な要因に帰属させる傾向。
5. 記憶関連の認知バイアス一覧
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アイソレーション効果
(Von Restorff effect)目立っている物が記憶によく残る効果。
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一貫性バイアス
(Consistency bias)ある人物の過去の態度や行動が、現在の態度により近いものだったと間違って思い出す現象。
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画像優位性効果
(Picture superiority effect)文字列よりも画像の方が記憶しやすい効果。
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間隔効果
(Spacing effect)短い間隔よりも長い間隔で繰り返し同じ情報を与えた方が記憶に残る効果。
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感情弱化バイアス
(Fading affect bias)嫌な記憶は良い記憶よりも早く忘れる傾向。
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奇異性効果
(Bizarreness effect)通常の出来事よりも奇異な出来事の方がよく覚えている傾向。
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記憶の固執
(Persistence)望まないトラウマが繰り返し現れる現象。
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記憶の生成効果
(Generation effect)単に読んで記憶するよりも、自分で作り出した情報の方がよく記憶できる効果。
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気分一致効果
(Mood congruence memory bias)良い気分の時には良い情報を、悪い気分の時には悪い情報をよく思い出す傾向。
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グーグル効果
(Google effect)インターネットですぐに検索できる情報は記憶しようとしない効果。
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クリプトムネジア
(Cryptomnesia)過去に本で読んだり人から聞いた話を、自分で経験したように思い込む現象。
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系列位置効果
(Serial position effect)最初と最後はよく記憶できるが、真ん中はあまり記憶できない現象。
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誤情報効果
(Misinformation effect)目撃証言などの外部の確証に接すると、たとえその確証が捏造であっても自分の記憶が不正確になる効果。
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困難処理効果
(Processing difficulty effect)時間をかけて読んだ情報ほど、よく思い出す傾向。
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作話(さくわ)
(Confabulation)宣言的記憶の欠如した記憶を、その他の記憶や周囲の情報で埋め合わせようとした際に、文脈を取り違え、覚えていないことを覚えているような感覚になり間違った事を話してしまう心理現象である。
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サフィックス効果
(Suffix effect)通常はリストの最後の要素が記憶に残りやすいが、最後に「END」などを付けると最後の要素が記憶に残らない現象。
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自己関連効果
(Self-relevance effect)自分に関係のある事はよく覚えている現象。
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自己充足的予言
(Self-fulfilling prophecy)自分が行った予言に沿って無意識に行動して予言通りになったにもかかわらず、予言が当たったと錯覚する傾向。
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自己中心性バイアス
(Egocentric bias)他の人がしたことよりも、自分のしたことを過大評価するバイアス。
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舌先現象
(Tip of the tongue phenomenon)思い出そうとすることが「喉まで出かかっているのに思い出せない」現象。
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情報源の混乱
(Source confusion)情報源の記憶を誤り、間違った記憶を作り出す現象。
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処理水準効果
(Levels-of-processing effect)記憶時に異なる記憶処理(音韻付け、意味付け等)を行うと、記憶の効果が異なる現象。
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人種効果
(Cross-race effect)異なる人種の顔の記憶が同じ人種より難しい傾向。
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ステレオタイプのバイアス
(Stereotypical bias)民族や職業などを知ると、そのステレオタイプの影響で記憶が歪められる傾向。
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スポットライト効果
(Spotlight effect)自分の外見や行為が他者に注目されていると過度に考える傾向。
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選択支持バイアス
(Choice-supportive bias)「自分の選択は正しかった」と思い込む傾向。
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ツァイガルニク効果
(Zeigarnik effect)人は達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象。
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次の番効果
(Next-in-line effect)自分が次の番の時、前の人の話の内容が記憶に残らない現象。
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テスト効果
(Testing effect)適切なテストを行うと、記憶に残る傾向。
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バラ色の回顧
(Rosy retrospection)過去の出来事を、その時点での評価よりも良い評価の記憶として思い出す現象。
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被暗示性
(Suggestibility)質問者の提示した話によって偽りの記憶が生成される現象。
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ピーク・エンドの法則
(Peak-end rule)過去の経験をその時間や経過ではなく、その絶頂時にどうだったか、ならびにどう終わったかだけで判定する傾向。
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平準化と強調化
(Leveling and Sharpening)時間が経つと記憶の細部が曖昧になり、逆に一部分が先鋭になる傾向。
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文脈効果
(Context effect)前後の刺激によって、印象の残り方が変わる現象。
マーケッティングの際には重要な効果。 -
変化バイアス
(Change bias)変化する努力をした場合、変化前の自分を実際よりも愚かだったと思い出す傾向。
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望遠鏡効果
(Telescoping effect)過去の出来事を実際よりも近い出来事と思い込みやすい傾向。
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モダリティ効果
(Modality effect)口頭でリストを説明された場合、リストの最後の方の要素が記憶に残る傾向。
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ユーモア効果
(Humor effect)面白く説明した方が、つまらない説明よりも記憶に残りやすい傾向。
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幼児期健忘
(Childhood amnesia)幼児期の記憶がなくなる症状。
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要約効果
(Verbatim effect)話の内容よりも話の要約を記憶する現象。
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リスト内手がかり効果
(Part-list cueing effect)リストの内容を思い出す時に、手がかりを与えると逆に思い出せなくなる現象。
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レミニセンスバンプ
(Reminiscence bump)10代後半から30代までの出来事をよく思い出す現象。
6. その他の有名なバイアス一覧(認知バイアスとは限らない)
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出版バイアス
(Publication bias)否定的な結果が出た研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいというバイアス。
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選択バイアス
(Selection bias)試験に組み入れる、対象,条件を選択するときに生じる偏り。
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助成金バイアス
(Funding bias)研究資金を提供してくれた人・組織に都合の良い研究結果が発表される傾向。
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反応バイアス
(Response bias)各種の調査において、被験者が調査者の期待を察した回答をする傾向。
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文化的バイアス
(Cultural bias)自分の所属している文化の価値観で現象を理解し、評価する傾向。
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メディア・バイアス
(Media bias)メディアが情報を伝える時、ソースのどの部分を取捨選択して伝えるかによって生じるバイアス。
7. 認知の歪み
「認知の歪み」(Cognitive distortion)とは誇張的で非合理的な思考パターンであり、これらは精神病理状態(とりわけ抑うつや不安)を永続化させうるとされている。
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スプリッティング
(Splitting)全か無かの思考。
人間の思考において、自己と他者の肯定的特質と否定的特質の両方をあわせ、現実的に、全体として捉えることの失敗である。 -
~すべき思考
(Should statements)他人に対し、その人が直面しているケースに関係なく、彼らは道徳的に「すべきである」「しなければならない」と期待すること。
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行き過ぎた一般化
(Overgeneralization)経験や根拠が不十分なまま早まった一般化を下す。
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心のフィルター
(Filtering)物事全体のうち、悪い部分のほうへ目が行ってしまい、良い部分が除外されてしまうこと。
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マイナス化思考
(Disqualifying the positive)上手くいったら「これはまぐれだ」と思い、上手くいかなかったら「やっぱりそうなんだ」と考える。
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結論の飛躍
(Jumping to conclusions)主張を行う動機をネガティブなものであると推測する「動機の勘繰り」、
その主張を行った場合、ネガティブな結果となる事を予測する「予言」、
その主張を行う者にネガティブなレッテルを貼る「レッテル貼り」、
の三種類が存在する。 -
拡大解釈、過小解釈Magnification and minimization)
失敗、弱み、脅威について、実際よりも過大に受け取ったり、一方で成功、強み、チャンスについて実際よりも過小に考えている。
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感情の理由づけ
(Emotional reasoning)単なる感情のみを根拠として、自分の考えが正しいと結論を下すこと。
感情移入が強くなると、「感情移入ギャップ」という現象が現れ、
「合理的な理由付け」ができなくなる傾向がある。 -
レッテル貼り
(Labeling)偶発性・外因性の出来事であるのに、それを誰かの人物像やこれまでの行動に帰属させて、ネガティブなレッテルを張ることである。
間違った認知により誤った人物像を創作してしまう。 -
個人化
(persionalization)自分がコントロールできないような結果が起こった時、それを自分の個人的責任として帰属させることである。
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常に正しい
(Always being right)自分が間違っている、などとは考えない。
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批判
(Blaming)問題の責任の所在は他人の故意または不注意にあると批判する。
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変化の錯誤
(Fallacy of change)他人を協力させるために社会的制裁に頼る。
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公正さの錯誤
(Fallacy of fairness)「正義」でない行為への怒り。
認知が歪んでしまうと、認知が真実から乖離してしまう。
すると真実に接した時には「認知的不協和」が発生する。
その場合、真実を受け入れるためには「認知の再構成」が必要であるが、
これは不協和のマグニチュードが大きくなればなるほど困難なプロセスとなる。
「生理的に受け付けない」程の巨大な不協和のマグニチュードを持つ主張や証拠に接した時には「嫌悪の知恵」(Wisdom of repugnance)と呼ばれる拒否反応が現れる。
自我を脅かす程の受け入れがたい真実を目の当たりにした場合、
「否認」と呼ばれる「防衛機制」が働き、
それらの主張や証拠は「自己欺瞞」というプロセスを通して否定される。
その過程を自身で納得させるためには、「合理的な理由付け」ができなくなる。
その代わりに「動機のある理由付け」として使用されるのが、
以下で説明する各種の「誤謬」である。
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